2016年7月18日月曜日

変異と崩壊

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時空現象論とこの章の目的
これまで述べた「物理現象は形象パターンであり、時空さえあれば自動的に構成される」と説明する理論を時空現象論と呼ぶことにする。この章では時空現象論に矛盾がないかを検証する。また時空現象論の観点から物理現象や物理法則がなぜ我々が目撃している様になるのか、その蓋然性を追求する。

変異・物理変異
現実世界において物理法則を無視した形象パターンが観測される場合、これを変異、または物理変異と呼ぶ事にする。変異は議論を進める上での架空の現象である。夢や錯覚の様な、一見おかしいがよく考えると物理法則として説明できる様な体験は変異とはしない。従って我々は変異を体験しない。

崩壊・世界崩壊
 主観が自己に起きた異常事態を感じる間もなくその主観パターンが自己認識できない様な形象パターンに移行し、そこから回復もしない事を崩壊、または世界崩壊と呼ぶ事にする。例えばこれは本人が無自覚の間に死ぬ事である。またある主観における次の瞬間において、その主観が存続できず、派生世界になれない全ての時空パターンは、その主観にとって崩壊する世界だと言える。

派生世界の体験率
 ある主体のある瞬間に対し、次の瞬間として適合する派生世界が複数ある場合、ある特定の世界を体験する確率は、派生世界の総数の分だけ低くなる。つまり派生世界の数がNの場合、主体がある特定の派生世界を体験する確率は1÷Nとなる。

過去は存在するとは限らない
 主観にとっては過去が記憶として存在してる事と、実際に記憶通りの形象パターンがあったのか区別が付かない。

主観Pが分裂した場合どちらの宿主になるかは不定である
 メカニズムは不明だが形象パターンを丸ごと分裂させることができる装置があるとする。この装置によって主体を分裂させた場合、どちらも過去の記憶を引き継いでいるため、どちらの主体が元の主体の正当な宿主かといった区別はつかない。

派生世界の体験率が均等な理由
  主観Pの分裂と同じ事が派生世界の主体にも言える。時空Pにはどのような形象Pも存在するため、派生世界も形象Pとしては実在している。つまり派生世界は世界ごと主体を分裂させたのと同じである。従って特に条件を指定せずに同時に世界が分裂したと考える場合、どちらの世界に主体がいくかは不定となる。各々の世界で主体は自分だけが過去の継承者だと信じる事になる。 
 形象Pは移動や変形に関するコストを伴わずに、時間ごとにどんなパターンでも存在するため、常識ではあり得ない様な変化をする派生世界に移行する確率と、あまり変化しない世界へ移行する確率が違うとする事はできない。現象形象化説によると、物理法則に従って物理Pが決まるのではなく、存続可能な主観Pがあればいくらでも派生世界になれる事に留意する必要がある。

速度選択
主観Pのある瞬間において次の瞬間にどの様な形象Pが選択されるかは、知覚のサイクルが短いパターン程選ばれ易い。この傾向や、この傾向によってもたらされる結果を速度選択と呼ぶことにする。なぜ速度選択が成立するかと言うと、派生世界の体験率が均等だという事は時間当たりに主観パターンを沢山製造するパターンが採用され易い事を意味するからである。

多量選択
主観Pのある瞬間において次の瞬間にどの様な形象Pが選択されるかは、同一、または類似のパターンが多い程採用され易いと言える。この傾向や、この傾向がもたらす結果を多量選択と呼ぶ事にする。なぜ多量選択が成立するかと言うと、派生世界の体験率は均等なので、似たパターンが多いパターン程選択される確率が高くなるからである。


変異のパラドクス
派生世界の体験率が平等である話を主観の構造についてあまり吟味せずに受け入れると、我々の次の瞬間としていたるところで変異が起こるような気がしてしまう。例えば6面サイコロを振った時に1から6のどれかの目が出る確率はサイコロが宙に浮き続ける確率や、サイコロが爆発する確率と等しい事になってしまう。なぜなら主観Pさえ持続するなら外界にどの様な現象が起こるとしても派生世界として成立すると考えるのが時空現象論だからだ。
 実際には我々は変異を体験しないため、変異が起こるはずだという考え方はどこかに矛盾や見落としがあるか、あるいはそうじゃなければ時空現象論の方に矛盾がある事になる。

崩壊は許容されるが変異は許容されない
崩壊はいくら起こったところで当事者の主体には認識できず、派生世界の選択肢からは除外される。従って崩壊はどれだけ起こっていても不思議でない。実際、どのような時空Pでも存在する以上、瞬間瞬間に無限に近い崩壊パターンが発生している。例えば我々の脳がランダムな変形をすれば、即座に主観としての機能を失うため、崩壊する。
 一方、外界のみが物理法則を無視し、主観が壊れない場合は変異が認識されてしまう。
 どの様な形象パターンでも存在する時空において、なぜ我々が変異を目撃しないのかを考える事は、主観の構造や物理法則の由来を考察するための材料となる。

物理形象の原則
我々はどの様な形象でも定義する事ができる。例えば時間に比例して拡大や縮小をする形象や、周囲の空間を吸収したり放出する形象など、形象パターンで表現可能なあらゆる形象が定義可能である。ただし、それらが物理形象になり得るかどうかは、
・主観パターンを構成可能かどうか
・変異が起こらない理由を説明できるか?
によって評価される。
これを物理形象の原則と呼ぶことにする。

崩壊安定
変異が崩壊によって防がれる事やその状況を崩壊安定と呼ぶ事にする。
例えば地球が我々に認識できない様な一瞬で爆発する様な変異は、その様な未来が我々に観測されない以上、世界の自動選択の対象にはならない。これが変異が崩壊によって防がれる崩壊安定の一例である。